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能力者の放課後能力者の放課後
どうやら杜子春様のブログらしい。三日坊主だけどな!
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+++
この雨はいつかあがるだろう
確率的に考えて。
+++

今日は最悪だ。

そこそこ地元でも有名な心霊スポットで、誰もいやしねえからと山奥でバイクを乗り回していりゃ雨に降り出され、挙句の果てにこの始末。
カチカチと明滅する街灯の下、緩やかなカーブの向こうの断崖絶壁からは地縛霊さんと妖獣くんが数体で連れ立ってこんばんわだ。

能力者だかなんだかもまったく楽じゃねえ。
全身ずぶぬれなだけでご勘弁願いたいもんだが、そうも言っていられねえらしい。

首が不自然に傾ぎ、血染めのドレス姿で鎖を引きずる女が引率役に違いないだろう。
まったく不幸な事故だ。だが俺は悪くはない。

不慣れだがうろたえて死んでやるほど俺は優しくないので、手始めに手近にいるドブネズミを数体ばかしこねくりまわして人の顔をくっつけたような風体の妖獣を轢き潰すことにした。

腹に響くようなイヤな感覚が伝わる。
そうしてバラバラの肉片になって死になおすそばから冗談みたいに消えうせるのを確認する暇もなく、詠唱兵器を引きずり出す。
そしてそのまま調子に乗って、こっちに迫ってきた影にガトリングガンを乱射した。
樹木のような肌に弾痕が刻まれるのを認識する間もなく俺がコケた。

―400ccには遥かに満たない軽量なバイクにのったままでガトリングガンを乱射した俺が馬鹿だったか・・・。

それだけが脳味噌を占領しやがる。ああ、駄目だな・・・。
ぞろぞろと影が俺を取り囲む。逃げる隙もありゃしねえ。
人の顔が浮き出た樹木のような妖獣が、俺のすぐそこのバイクのタンクを踏みつけ、拉げさせる。
あれなら俺の頭もあっさり踏み潰すだろう。
だというのに連中はねちねちと嬲るように俺を締め上げている。
体が動かない、体温が持っていかれる。今までで一番最悪だ。

―せめてカッコいい地縛霊にしてくれよ・・・?

そんな辞世の句を心の中でつぶやいたところで、真横から真っ赤な火柱が上がる。

「うおーい、坊主、生きてっかー?」

どうやらツキが向いてきたらしい。
0%とかいうありえねえ確率で降り出した土砂降りの雨の中、人気のない真夜中の心霊スポットで、能力者が、俺の目の前を通りがかった、というわけだ。

本当に笑い出したくなってきた。
動かなかった体の自由が戻る。ビビってんのはガラじゃねえ。
手元のガトリングを木に浮き出たツラに叩き込む。
着弾のたびダンスを踊る木材野郎にさんざっぱらブチかましてやるとだいぶ大人しくなった。

「まあ、かろうじて?」

笑うしかない状況に漸くそう答え、男のほうを見た。
見覚えは、ない。多分年は高校生くらいか。トライバル紋様に剃り込みの入った黄色い五分刈りに、がっしりした体つき。
表情は所謂体育会系というよか、俺と同じ匂いがする。
若い身空からテレビも見ず女の尻を追いかけることもせず・・・まじめに殴り合いとバイクに明け暮れるような典型的な古臭い不良って奴だ。
静岡県東部にはいまだにこんな奴らが残っていやがる。
浜松には小奇麗な奴しかいなかったというのに。

俺が見ている間に、ぞろぞろとゴーストどもがそいつに向かっていく。

お手並み拝見、といきたいところだ。
立ち上がってガトリングを構えなおしながら奴を見やる。

その兄さんはチャチなバス停で木材野郎をバッキバキに殴ってやがった。
ゴーストも殴りかかっているのだが、大した傷は与えられていない。

―つーか俺の命の恩人、バス停装備かよ。それも冗談みたいな強さじゃん。

「ぼさっと見てねーで手伝え。」

ったくそんだけ強けりゃ自分で畳んだってバチはあたらねえだろ、と心の中でぼやき、それでも七割がた楽しいはと思いながらガトリングを構える。

ぎちい、と声をあげて漸くそろりそろりと赤ドレスが動く。
良く見たら手にぶら下げているのはブーケではなく、ザクロのようにぱっくり割れた頭から花のようなものを生やす、上半身しかない男の体だ。

結婚式帰りだったんだろうなあ、と思いつつ俺は女の顔面に銃口を向けて炎の弾を撃ち出す。
人間松明になってる赤ドレスがぎちぎちと悲鳴を上げて男を取り落とす。
行けるな、と確信するのもつかの間、冗談のような速度で上半身だけの男―恐らくリビングデッド―がこちらへ走ってくる。

「やべ」

銃口を向けて銃弾を打ち出すも、平然と動きやがる。
頭がばっくり開いて赤黒い牙が生えた肉の花が広がったところで、バス停が横合いから振り下ろされてそいつの首が切り落とされた。

「ぼさっとすんなよ。」

バス停男はキィーキィーとか細い声を上げて動く上半身男を踏みつけながら、カッコイイくらいにキマった調子でウィンクして見せた。
畜生、男なのに惚れそうだ。

頭を炎上させ、異形化した腕を振り回しながら接近する赤ドレスに再度銃口を向ける。

―その腹に叩き込んでやんよ。

引き金を引くと同時に耳を劈く悲痛な悲鳴が俺を襲った。
びりびり震えてと頭の中身がシェイクされるみてえだ。くそっ。

頭が朦朧として言うことをきかない。
体の感覚が傾いで消失する、視界がより暗くなり、全ての音が篭って消えかけ・・・。

「っづおぉぉぉい!!」

それを吹き飛ばすために気合の声を上げた。
本当死ぬかとおもったじゃねえか。

バス停男はというと、奴も調子悪そうに顔をしかめていた。

―まったく手間をかけさせやがる・・・。

赤ドレスの方もそれでも無事ではない。
一気にたたんでしまえ。

バス停男がそのバス停に炎を宿らせ、顔面を殴りつけるのと同時に俺は踏み込み、至近距離から炎弾を腹に叩きこんだ。


とりあえず決着がどうなのかは知らねえ。
赤ドレスがケシ炭になったのは見た気がする。
正直疲労が一杯一杯だ・・・早く晴れて太陽出れ。

そう呪いながら俺はばったり倒れた。






目が覚めたらまだ夜だった。雨はやんでいたがとても寝心地が悪い、最悪だ。
全身はずぶ濡れ。しかも枕になっているものがごつごつとしている。
そして、あちこち痛え。
焦点があいはじめると、見知らぬ天井どころか知らないツラがみえる。

「おお、無事だったな。」

その声はバス停男だ。

というか服の胸元が肌蹴ている。さらにベルトが外れてる。
しかも膝枕。

「キャーーーー!」

疲労とか眠気とかが一気にケシ飛んだ。
身の危険を感じてズボンをずり上げてバス停男から離れる。

「そんな目で見んなキャーじゃねーぶっ飛ばすぞコラ!!」

マジで逆上した調子でバス停男がブチ切れている。
そっち系ではないらしい。

「行き成り倒れたら気道確保くらいすんだろがコラ。
 最初から最後まで心配させやがって。」

一応俺を心配してはくれたらしい。
超放任家庭で育った俺にはとても新鮮だ。

「ま、無事そうで安心したぜ・・・で、名前は。」

やれやれ、聞かれたかねえ質問を。
かといって恩人に名のらねえわけにも行かないので、あまり好きじゃない自分の名を名乗った。

「トシハルだよ。鈴木杜子春。芥川龍之介の杜子春で、トシハル。それにしたって鈴木多すぎだよな・・・静岡。」

で、アンタは?と促す。

「勝又だ、勝又雅之。御殿場あたりじゃありふれた苗字だわな。」

苗字くらい気にすんなって、とか言いながら、俺のバイクを引き起こす。
背丈は・・・俺と同じくらいか。

「ドラッグスター250ねえ・・・アメリカンスタイルたー割と趣味のシロモノだな。ハンパだが。せめて400乗れよ。」

とりあえず俺が中坊で、DSが親父の趣味なのは黙っておいた。
いや、あとで割れたんだけどね・・・。
マサ兄とであったのはこいつが最初だった。
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